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執筆者の写真江川 海人

問いは前提を創る

それゆえ、その言葉の意味以上の力を持ち得、その反面、時に危険な問題を引き起こしえる。



「アフリカの女性の人権を守るには?」という質問には、アフリカの女性の人権が侵害されていること、ひいてはアフリカの女性は絶対的被害者であることをも前提としえる。そしてその前提の認知は、ほとんどの場合、無意識的に行われる。問いを受け、それに答えようとする時、人はその前提を無意識の内に正当なものとして受け入れてしまう。そして、そこから涵養される言語化された思いは、根本的な信条と、一時的な感情の間に混合され、その前提を正しいものとして甘受したいという、惰性的な思考傾向をも育んでしまう。この事象は、問いが持つ大きな力の一つであり、最も注意しなければならない力の内の一つである。


あなたは何のアーティスト?

この問いは、「あなたがアーティストであること」を前提としている。人は誰しも創造性 Creativity を持つ。しかし、日々の会話・議論では、アーティストとは一部の才能がある人だけが名乗るものかのように語られる。「しかし、そうではない」といった前提が、この問いには秘められている。誰しもがアーティストであることは前提であり、その上での思考・議論の時間を設計する。「あなたはアーティスト?」という次元の問いは飛び越え、「何のアーティストであるのか?」を問うのだ。


そして、まさに今行っている言葉を紡ぐこと、そしてそれを介して意思疎通を行っていること自体が、人間の根源的な創造性の存在を証明し続けている。

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